
土壌の風味:世界のコーヒーの味わい
なぜコロンビアのコーヒーは明るく柑橘系の風味があり、スマトラのコーヒーは力強く土っぽい味がするのでしょうか?その答えは「テロワール」にあります。テロワールとは、気候、高度、土壌、加工方法といった、コーヒーの味わいを形作る独自の組み合わせのことです。本ガイドでは、コーヒーのテロワールが味にどう影響するのかを探り、世界各地の主要なコーヒー生産地の代表的な風味について紹介します。
気候
雨量から気温まで、あらゆる気候条件がコーヒーの風味に影響を与えます。
暖かい気候ではコーヒーの成長が早まり、豆の密度が低くなるため、風味が平坦になりやすい傾向があります。一方、降雨が多すぎると「さび病」やカビなどの病気が発生しやすくなり、乾燥しすぎると豆が十分に発達せず、サイズや風味に影響を与えます。
高度もコーヒーの味に大きく関係します。標高 1,200-2,000 メートルの高地では、酸味がより複雑になり、糖分も増える傾向にあります。反対に、低地では空気圧が高く成長期間が短いため、まろやかで土っぽい味になります。
最後に、土壌の成分も植物の成長に影響を与えます。エチオピア、グアテマラ、ハワイのようにミネラル豊富な地域では、果実味のある風味のコーヒーが育ちやすいです。
それでは、地域ごとにどのような風味のコーヒーが楽しめるのか、世界の主要生産国を見ていきましょう。まずは人気の高い国々から始め、最後にあまり知られていない産地も紹介します。
南アメリカ
気候:南アメリカには、ブラジルの低地にある熱帯農園から、コロンビアやペルーの高地アンデス地域まで、さまざまな気候帯が存在します。標高 800-2,200 メートル、気温は 17°C-25°C で、年間降雨量は 1,200-2,500mm と安定しており、火山性の肥沃な土壌も相まって、理想的なコーヒー栽培条件が整っています。コロンビアは年に 2 回収穫期があるため、新鮮な豆の安定供給が可能です。
風味:標高や気候の多様性により、南アメリカのコーヒーは甘み、酸味、コクのバランスが良く、世界中で高い人気を誇ります。ブラジルのような低地では酸味が少なく、チョコレートやナッツのようなリッチな味わいに。高地のコロンビア、ペルー、エクアドルでは、明るい柑橘の風味、花のような香り、キャラメルの甘さ、滑らかな後味が楽しめます。
国別特徴:
- コロンビア:明るい酸味、中程度のボディ。柑橘系、キャラメル、チョコレートの風味。高地栽培・年 2 回の収穫。
- ブラジル:酸味が少なく、ボディは重め。チョコレート、ナッツ、ドライフルーツの味。安定した気候の低地栽培。
- ペルー:穏やかな酸味、軽〜中程度のボディ。花、果実、ナッツのような風味。高地栽培でクリーンで繊細な味わい。
中米
気候:中米は標高 1,200-2,000 メートルの高地農園と多様なマイクロクライメートで知られます。山岳地帯と火山性土壌、年間 1,500-3,000mm の安定した降雨が、コーヒーの成長をゆっくりと促し、酸味の強い複雑な風味を育てます。岩の多い火山性土壌は排水性が良く、植物を適度に潤します。
風味:
中米のコーヒーは、酸味が鋭く、ミディアムボディで、果実味・花の香り・甘さのバランスが魅力。地域ごとに異なる風味が楽しめ、スペシャルティコーヒー愛好家に高く評価されています。
国別特徴:
- グアテマラ:フルボディでなめらか。チョコレート、ナッツ、ストーンフルーツ(桃、プラム、ネクタリン)とバランスの良い酸味。
- コスタリカ:明るい酸味、中程度のボディ。柑橘系、花、ハチミツのような風味。クリーンで鮮やかな味わいが特徴。
- ホンジュラス:穏やかな酸味、スムーズなボディ。ナッツやチョコレート、南国果実の甘さが感じられる。グアテマラに似るが、ややマイルド。
アフリカ
気候:アフリカでは、1,200-2,000 メートルの高地で栽培され、昼は暖かく夜は冷える気候により、豆がゆっくり成長し、複雑な風味が育ちます。年間の降水量は 1,500-2,500mm と豊富で、豊かで力強い味わいの源となります。
風味:コーヒー発祥の地とされるアフリカは、世界でもっとも個性的で評価の高いコーヒー豆を生産しています。アフリカ産の豆は、明るい酸味とフルーティーな風味を持ち、花やスパイス、土っぽさも感じられます。
国別特徴:
- エチオピア:明るくフルーティーで花の香りがある。ブルーベリー、柑橘、ジャスミンの風味が特徴的。
- ケニア:力強い酸味、フルボディ。柑橘やベリーの風味に、ワインのような甘い後味。
- ルワンダ:赤い果実(チェリー、アプリコット)の風味、ミディアムボディ。紅茶のようななめらかな後味でバランスが良い。
アジア・太平洋地域
気候:この地域は熱帯気候で、気温は 21°C-29°C、高湿度が特徴です。標高 800-1,800 メートルの地域で栽培され、火山性土壌やモンスーンの影響を受け、個性的な風味を持つ豆が育ちます。高地では成長が遅いため甘味が増し、低地ではまろやかで土っぽい味になります。
風味:アジア・太平洋のコーヒーは、フルボディで酸味が控えめ。土っぽさ、スパイス感があり、それぞれの国に特徴があります。
国別特徴:
- インドネシア(スマトラ、ジャワ、バリ):スマトラは力強く土っぽいチョコレートやスパイスの風味。ジャワはなめらかでナッツ・ハーブ系。バリは繊細で花や柑橘、ミルクチョコの風味。
- ベトナム:主にロブスタ種。強くナッツっぽくチョコレートのような風味で、重めのボディと穏やかな酸味。
- パプアニューギニア:アフリカ産に似て、明るい酸味、トロピカルフルーツ、紅茶のような花の香りと中程度のボディ。
新興コーヒー生産地
技術や栽培法の進歩により、新たな地域でも高品質なコーヒー豆の生産が可能になってきました。以下は注目すべき新興の生産地です:
- イエメン:世界最古のコーヒー産地の一つ。ワインのような酸味、深いチョコの香り、シナモンやカルダモンのようなスパイス感。伝統的な乾燥処理により複雑で素朴な風味。
- ハワイ(コナコーヒー):マウナロア火山の斜面で栽培。スムーズで甘く、ナッツ、バター、キャラメルのような風味。高地とミネラル豊富な土壌が、軽やかな酸味と繊細な果実味を引き出す。
- タンザニア:明るい酸味とフローラルな香り。柑橘系の酸味、ベリーの甘さ、紅茶やジャスミンのようなニュアンス。ピーベリー種は特に風味が凝縮され人気。
- ボリビア:チョコやキャラメルのような風味、明るい酸味となめらかな口当たり。高地栽培により、ナッツやリンゴ、ハチミツ、柑橘系のバランスの取れた香り。
- タイ:花や紅茶のような香り、中程度のボディ。トロピカルフルーツやスパイス、黒糖のような繊細な味わいで、軽やかで芳香豊か。
スペシャルティコーヒー:世界を味わう体験
コーヒーは、その土地の気候と文化を映す飲み物です。次に一杯のコーヒーを味わうときは、ただのカフェイン摂取ではなく、その豆が育った地域独特の体験を味わいながらお楽しみください。